スポーツ界がそうであるように若手の台頭はその世界を活性化する。このところ男性陣に押され気味だった演歌界に生きのいい女性演歌歌手がすい星のごとく現れた。今年の5月に徳間ジャパンコミュニケーションズからデビューした朝花美穂だ。まだ弱冠19歳という若さだが力で押してくる迫力に加え、彼女ならではのほどよい色あいが武器と見た。心をくすぐる歌手はいるが、歌でこれほどの魂しいを揺さぶる歌い手にはめったにお目にかからない。ひょっとしたら歌謡界の救世主になる、そんな可能性を秘めた逸材である。

8月9日、満席の「KOBE流行歌ライブ」で新人としては異例の30分のステージを踏んだ。本来、デビュー早々の新人は「新人コーナー」という枠の中で1、2曲披露するのが通例だが、彼女に関してはKOBE流行歌ライブのスタッフから「是非30分で…」そんな声に応えたものだった。
ステージでその実力は早々に訪れた。1曲目の「伯耆大山」(デビュー曲のカップリング)が終わった途端、会場一杯に埋めた観衆から異様などよめきが起こった。記者もその度胸満点のステージに鳥肌が立った。このライブはスタートしてもう15年目。こんなどよめきは初めて経験した。それもまだデビューして3カ月足らずのほやほやの新人だ。当然、30分(6曲披露)のステージに観衆をくぎ付けにしたことは言うまでもない。

出身地・鳥取で祖母がカラオケ喫茶を営んでおり、その影響で歌と踊りを学んだ。高校3年の時、地元エリアで開催された「NHKのど自慢」で島津亜矢の「縁」を歌いチャンピオンに。その当時から注目されていたと聞く。

王道演歌は勿論、1つの魅力が台詞入りの歌だ。ライブではで台詞入りの代表的な作品「瞼の母」を歌い大喝采を浴びたし、最後は自身のデビュー曲「なみだの峠」(台詞ロングバージョン)で締めくくった。1曲1曲折々の表情を見せる味わいは観衆をしっかりと引き付けるまさに大型新人という形容がぴったりだ。

歌い終えてお喋りタイムに入ると、19歳の女性に戻る。そのギャップがまた魅力的で観衆を暖かく包み込む。若さゆえ気負いが所々に見え隠れするが、その気負いがまたいい意味で心地いい。ただ歌唱力とテクニックに頼るだけでは成長はしない。自然体で歌えるようになれば歌に温もりが出る。そのためにはいろんな事を見聞しながらしっかりと感性を磨くことだろう―。そんな彼女の姿を観ていると静かに燃えている研磨の炎が見える。是非、歌謡界に大きな風穴を開けてもらいたいし、危機感を持つ業界関係者を勇気付けてくれる、そんな1人になってほしい。

文:金丸