【連載】流行歌さんぽみち vol.27
新型コロナウイルスの感染拡大はいつまで続くのか「もうええ加減にしてほしい」―日本国民のほとんどがそんな願いではないだろうか。音楽業界にもそんな思いが蔓延していることは言うまでもない。このところ家にいる事が多くストレスの溜まる毎日を過ごしている。昼間の時間はテレビ観賞でコロナウイルス関連がほとんど。感染状況を伝える番組を見るにつけ心がどんどん落ち込む。ただ夜はBS放送の歌番組を観るのが楽しみだ。勿論、ジャンルは演歌・歌謡曲。中には昭和時代の古い映像も観れる。先日、全盛期の島倉千代子さんの懐かしい映像を観ることができた。その映像を観ながら筆者がまだ新聞記者時代、わが社の会議室でインタビューした時の事が蘇った。
島倉さんを単独でインタビューしたのはその時が初めて。すでに実績もあり演歌界のトップグループにいる1人だっただけにこちらは少々構えての取材だったことを覚えている。
あった瞬間、当方がまず驚いたのがノーメイク。平たく言えばすっぴん。歌の話は二の次でまず「いつもノーメイクなんですか?」と失礼ながらそう切り出したら「そうです。メディアの方とお会いする時はいつもそうなんですよ」とサラッと…。その言葉に何となく重みを感じたものだ。
島倉さんと言えば勿論ミリオンヒットもあればNHK紅白歌合戦の常連でもあったし、日本コロムビアの先輩だった故・美空ひばりさんに憧れ歌手の道へ。一年目でいきなりスターダムに。あれよあれよという間に日本コロムビアを代表する女性歌手に。以来、順風満帆の時代が続いた。
しかし、離婚、借金、病気(癌)…、自身の代表作「人生いろいろ」を地で行ったおチヨさん。癌の告知を受け、歌う事を諦めた時期もあったし、薬の後遺症から声を出すのが辛くなったこともあったと述懐したが、「でも、もう99%回復しましたヨ」と心境をそう語った時の笑顔は今も記者の脳裏に鮮明に焼き付いている。
歌への意欲、病気に立ち向かう意欲、新しい事に挑戦する意欲が長い歌手人生の支えになったのでは、と推測する。
文:金丸