演歌界は女高男低の時代がしばらく続いたがここにきて男性陣の頑張りが目立っている。最大の理由は若手の成長にある。山内惠介、三山ひろし、福田こうへいはその代表で「平成の三羽ガラス」といっても誰も文句はいわないだろう。キャリア、実績とも一歩抜け出しているのが山内。デビューして今年もう18年目。不毛の時代もあったが、彼を取り巻くスタッフと切磋琢磨しながら粘り強く頑張ってきた結果だろう。

その山内の最初の生ステージを観たのは記者が5年の構想の末演歌好きのツワモノらと立ち上げた「私を世に問う演歌ライブ」。(改め「大阪発流行歌ライブ」)だった。初めての出演は平成13年5月16日。デビュー曲「霧情」を引っ提げての登場だった。まだ高校生だった。当時はそれほどスポットライトは当たっていなかった。最初の印象は無口でぶっきらぼうな青年という印象は拭えなかったが、「色白で端正なマスク・・」にキラッと光るものを感じたことを記憶している。
大阪発流行歌ライブでは「将来が期待できる逸材」と3回連続(俗に言うヘビーローテーシヨン)で出演してもらったり、大阪流行歌ライブから遅れること10年後に新たにスタートした「KOBE流行歌ライブ」にも度々出演してくれた。

その山内も1カ月の座長公演が出来るまでに成長した。今年の2月は大阪・新歌舞伎座で昨年に続いての座長公演を行い、連日熱心なファンらが駆け付け、山内の一挙手一投足に声援を送っている。
公演5日目の昼の部を観た。今回も芝居と歌の2部構成。1部の芝居「若さま走馬灯~来馬信兵衛~」では道場破りで生計を立てるほど剣の達人で下町の長屋に居座り近所の人からは「若さま」と呼ばれる人気者、という設定。見事な立ち回りもあるなど見せ場も多い。役者・山内も自ら「とにかくセリフを覚えるのが精一杯でしたし、周りの役者さんに比べ大根だなぁ~と・・」と思わず苦笑い。

一方、2部のヒットパレードは「山内惠介オンステージ~若さまと貴公子~」と銘打ってオリジナルは勿論、郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎の新御三家の代表作を歌ったり、和服姿で和の世界~山内惠介が誘う日本の旅情~と題して「奥飛騨慕情」や「長良川艶歌」などを披露。オリジナルコーナーでは自身初のヒット曲となった「風連湖」、「恋する街角」などをトークを交えながら披露。最後は3月28日に発売する新曲「さらせ冬の嵐」(作詞:松井五郎/作曲:水森英夫)を熱唱した山内。芝居でも歌でも持ち味である爽やかな笑顔と声で表現しながら観衆を魅了した。また、2部のステージで芝居の事、デビュー当時の事、スタッフの事等々を感慨深げに語ったのが印象的だったし、公演のスタート日が熱戦を繰り広げている韓国・平昌オリンピック開幕と同じ2月9日ということもあり、ステージから「僕も金メダルがほしい~」と叫んだ。

プロ野球などスポーツの世界がそうであるように業界の活性化には生きのいい若手の台頭が必要不可欠だ。山内、三山、福田を「平成の三羽ガラス」と記者が独断で表現したが、この3人が業界のカンフル剤になれば市場はいい方向に向くだろう想像する。
三山は演歌にありがちな濃い目の味付けを避け、温もりのある旋律と声でファンを魅了している。福田は民謡で鍛えた声にキレがある。山内にはこの2人にない声と表情、表現にファッション性がある。つまり3人3様異なった持ち味があるところに魅力を感じる。

勢いのある若手のパワーなんて思いがけないところに出るのが世の常。山内が若手のリーダーになり競い、切磋琢磨しながら市場をグイグイ引っ張ってほしい。単打もいいがそろそろ満塁ホームランをずばっと決めてほしいネ。

文:金丸