§ TOPインタビュー

ユーザーと一番近いメディアであるCDショップの相次ぐ閉店、イベントの自粛、延期、中止等コロナ禍で苦戦を強いられている音楽界。この業界に携わっている1人として痛恨の思いである。このhayariuta.jpのトップインタビューはこれまで若手にスポットを当ててきたが、今回は今年デビュー45周年を迎えたベテランの川中美幸さんにお願いした。
45年は長い道のりであったに違いない。勿論、紆余曲折もあっただろう。しかし、持ち前の笑顔と内に秘めたガッツ、それとトレードマークになっている絶妙なトークが歌手・川中美幸の背中を強く強く押したと想像する。令和3年2月3日には45周年記念曲の冠がついた新曲「恋情歌」(作詞:麻こよみ/作曲:弦哲也/編曲:南郷達也)を発売。前作「海峡雪しぐれ」を彷彿させる女の情念が聴き手にビシビシ伝わってくるまさに王道演歌だ。憂鬱なコロナ禍の音楽業界を明るく照らしてもらいたく、タフな川中さんの生活ぶりや新曲について、また、厳しい演歌界についてインタビューした。
 
―世の中はコロナ禍で悪戦苦闘していますがエンターテインメントの世界も例外ではありません。我々の音楽界も想像を絶する苦戦を余儀なくされていますが、プライベートではどんな毎日をお過ごしですか? 近況等をお聞かせください。

「私生活ではほとんど家に籠っていることが多いですね。そのため、日頃出来なかった事に時間を割いています。例えばこれまで溜まっていた資料や写真を整理したり好きな映画を観たりと、色んなことをしています。ステイホーム中は自分を改めて見つめ直しこれまでの人生を振り返るなどいい意味での充電期間でもありますし、川中美幸として45年も歌ってこられた事に感謝で一杯です。沢山の出会いもあり別れもありました。色んな事がまさに走馬灯のように思い出されます。改めてそんな事を感じる今日この頃です。また、趣味の洋裁を生かしてマスクが足らない時には沢山の手作りマスクをスタッフの皆さんへお配りしました。コロナ禍では色々考えてもどうしようもないので日々できる事に夢中でしたね」


マスク職人・川中美幸お手製のマスクとこぶしまる

―コロナ禍の影響を受けてこれだけ長い期間歌う機会が減るという事は今までに無かったでしょうね?

「そうですね。こんな事は初めての経験です。ただ、2月3日に発売した新曲『恋情歌』のPRのためにラジオ出演したり、インターネットで生配信を試みたりと色んな事に挑戦しています。初体験も多いですがとってもいい緊張感もあり、それなりの成果もあったと自負しています」

―ところで今年は「川中美幸」に改名されて早や45周年だそうですね。おめでとうございます。月並みですがこの45周年を振り返ってみてどんな感じですか?

「この春から45周年に入ります。ひと言で言うとあっという間の45周年でした。いい事もあったし逆に悪いこともありましたが、この45周年は好きな歌が歌えて幸せでした。いい人生だったと振り返る事自体がとっても幸せです。これからも1日1日を大切に充実した日々を送りたいと思っています」

―年号が昭和から平成に、そして令和になって3年目ですが何か変化はありますか?

「コロナ禍というかつてない状況の中、特に良い時代だった昭和に比べ雰囲気的には今の世の中はそんな感じではないですね。昭和時代は演歌・歌謡曲の世界でミリオンヒット曲も沢山ありましたし、市場にも安定感があり活気がありました。今はリモートの時代。良い時代だった昭和に戻るのは難しいように思います。強く感じる事ですが、歌謡界に熱い人がすっかり減ってきているようにも思うし、この市場での旗振り役もめっきり少なくなったように思います。きっといろんな意味での余裕がなくなったのかな?…そんな思いです」

―満を持して45周年記念盤の冠が付いた新曲「恋情歌」を発売されましたが、発売早々から評判が良いですね。イントロからしてこれからどんなドラマが生まれるんだろう、とドキドキさせてくれる作品ですね

「有難うございます。予想以上に評判が良く心強く思っています。とくにイントロとアレンジがめちゃめちゃカッコいいと思います。この作品が売れなかったら歌手をやめよう、それほど力が入っています(笑)。歌っていると自然に情景が浮かぶんです。歌うと気合が入り過ぎてしまいそう、そんな一曲です。演歌界はカラオケというメディアが市場に出て歌の流れが変化しています。カラオケファンに支えられている事も間違いありませんし無視は出来ません。今回の新曲は歌う人が感じるままに歌ってもらえばと思います。この作品は私の集大成でもあり、歌う度に奮い立たせてもらっています」

―カップリングは前作同様にセリフ入りですね。また、別ヴァージョンで発売された前川清さんとのデュエット作品「東京シティ・セレナーゼ」の評判もいいようですね

「カップリングに関してはセリフが入ると何となく温か味が出るように思い私からリクエストしました。また、一昨年から落語に挑戦している事もあり、これからは語りだけのCDもいいし語りを多くした作品にも挑戦したいと思っています。前川さんとのデュエット作『東京シティ・セレナーゼ』は都会的なおしゃれな男と女の作品です。歌っていて気分がとっても良いです。前川さんとは昨年名古屋でステージをご一緒させてもらいました。全国的にツアーを開催する方向で準備中でしたがコロナ禍の影響で中止、延期を余儀なくされていますので、全国開催はこれからの状況を見据えて決めたいと思っています。でも、5月19日には地元大阪の新歌舞伎座で1日だけですがソロコンサートを予定しています。コロナ禍の状況次第ですが何としても実現したいと思っています」

*2021年5月19日(水)(1回目:12:30/2回目:16:30)大阪・新歌舞伎座にて「川中美幸歌手生活45周年 2021コンサート『人・うた・心』」 開催!
 1階席9,000円/2階席5,000円/3階席3,000円/特別席11,000円(税込)
お問合せ先:新歌舞伎座テレホン予約センター
TEL 06-7730-2222(午前10時~午後4時)
※一般発売/インターネット・電話予約は2021年4月16日(金)10:00~

―お話の中にもありましたが落語への挑戦は随分前向きな事ですね。引き出しが1つ増えた、そんな感じでしょうか?

「落語は色んな方のDVDなどを観て勉強しています。これからも積極的に挑戦していくつもりです。落語を見聞する事で歌に生かされていると理解しています。いまはコロナ禍で家にいる時間が多いので貪欲に色んな事に挑戦していきたいですね。きっとお母ちゃんが“頑張れ!”と天国からエールを送ってくれていると思います」

―最後に、45周年を記念したイベント等は何かありますか?

「もちろん1つの節目でもありますから何かしたいとの思いは正直ありますが、コロナ禍の中で今は企画を立てる事は残念ですが難しいです。音楽業界もコロナ禍で大変厳しい状況下ですが、みんなで力を合わせて盛り上げていきたいですし、そのためにはやはり若手の台頭が必須条件だと思います。私が所属しているテイチクエンタテインメントにもこのところ若手が頑張っていますので、彼ら彼女らと切磋琢磨しながら市場を盛り上げていきたいと思います。とにかくコロナ禍に負けないでこれからも力の続く限り歌い続けていけたら幸せです」

*記者のひとりごと
川中と最初に会ったのはまだ駆け出しの新聞記者時代。大阪・中ノ島にあった会社の会議室。まだ春日はるみという芸名でデビュー早々の川中が恩師と慕う作詞家・もず唱平氏に連れられての来訪だった。ホットパンツにTシャツというコスチュームだったと記憶している。デビュー早々だけにもず氏に寄り添うその姿に初々しさを感じたものだ。そんな川中も今や歌謡界の第一線で活躍しているベテラン。ベテランの域に入るとその多くは守りに入るのが世の常人の常。川中には落語に挑戦したように攻めの姿勢を貫き同時に持ち前の明るさと行動力で歌謡界を引っ張ってほしいネ。好奇心が欠落している人は必ず落ちこぼれる。川中にはいつまでも貪欲に広い視野を持って前進してほしい。ヒットを生むことは歌謡界を動かし、同時に人を動かす。コロナ禍で未曽有の窮地にある歌謡界に新たな一石を投じて45週年を有終の美で飾ってほしい。楽しみのない所に真の成功はない。

インタビュー:金丸

 
*スケジュール等はこちらをご確認ください
<テイチクエンタテインメント 公式サイト>

<川中美幸 オフィシャルサイト>