Vol.1
創業67年。「演歌は日本人の心」:「あこや楽器店」 野村茂夫 社長
                     (大阪市北区天神橋4-4-8)


店舗入口に演歌の大御所・北島三郎の等身大の像がお客さんを暖かく迎えてくれるのが創業67年の歴史を持ち「演歌は日本人の心」の標榜を掲げた老舗の「あこや楽器店」(野村茂夫社長)。
年々、CDショップが全国的に減る傾向にある中、野村社長は「状況はいいとはいえないが現状をしっかり保っていきたい」と長男夫婦(野村幸雄専務取締役、恵店長)と女性スタッフの4人体制で店舗を維持している。

同店は日本一長い商店街としてここ数年国内外旅行客にも大人気の「天神橋筋商店街」の4丁目にあり、JR環状線・天満駅からすぐという立地。オープン以来、代表として店を守っている野村社長。姉の嫁ぎ先がレコード店(奈良市内)だったことから1年半ほど同店で修行を積み26歳の時、現在の地で店舗をオープンした。
「天神橋も知らなかった時にこの場所を紹介された。当時はまだ建物はバラック状態で最初はレコード販売ではなく楽譜とかギターなどの楽器類をメインの商売でした」という野村社長。レコード販売を本格的に立ち上げたのは昭和30年頃だった、と述懐する。レコード業界がちょうどに上昇機運に差し掛かった時期だ。その勢い、雰囲気をいち早く察した野村社長の先見の明が光る。


その野村社長はもう93歳という御歳(大正13年生まれ)だが今も帳簿を付けスタッフにゲキを飛ばす一方、地元北区の商連友の会会長や老人クラブ連合会会長など地域への貢献度も高い。

演歌はもちろん、創業当時はポップス、ジャズ、クラシックといったジャンルも積極的に販売していたが、昭和47年に現在の店舗に建て替えをしたのを機に商品を思い切って演歌中心に切り替えた。多分、外資系など大型店への対抗処置だったのでは?と想像する。今は同店だけだが、最盛期には大阪府下の門真、関目、高槻、大丸デパート梅田店に支店を出店した。
店舗面積は66平方メートルと決して広くはないが、店内にはCDシングル、アルバムのほか何処よりも多いと自慢の1つがカセットテープの充実だ。「ある人に東京にもこれだけのカセットテープを置いているところはないといわれた。ただ、メーカーがカセットテープを作らない時代になったので必然的に需要は減っている。それでもアルバム販売の約20%はカセットテープですね」とまだカセットの需要は無視できないらしい。


CDショップの減少に歯止めがかからない。大阪市場も例外ではない。「演歌有力店が相次ぎ閉店を余儀なくされている。おそらく演歌系中心の店舗は大阪市内では当店だけでしょう。大阪のショップも減っているが京都や兵庫も少なくなっています。残念なことです」とショップの話になると顔が一瞬曇ったが、「遠くから演歌ファンがわざわざ来店してもらっています。そんなお客さんのためにもしっかり在庫を整備しPRしていきたい」と年齢を感じさせない意気込みが感じ取れた。

店内は売れ筋商品をメインに昭和の良き時代にヒットを連発した歌手のアルバムも所狭しと並ぶ。ポスターも壁面一杯に、まさに演歌色の様相を演出。売上げも「大きくは落ちていない」と前置きしながら「この4~5年、年間の売上げは安定している」という。店頭販売はもちろん、注文を受け地方への発送も行う。
「立地条件」と「在庫量」がかつてレコード店の必須条件だったが、野村社長は「立地条件は今も変わらないが、店舗が持ち家であることが生き延びる条件」だという。つまり家賃を払っていては経営は成り立たない、ということらしい。全体の在庫量は決して多くはないが、演歌にターゲットを絞ったという戦略が勝利を導いた。


野村社長は高齢だが毎日店に顔を出し時にはお客さんと面談もする。多分、常連さんとは昔話に花を咲かせているのだろう。そんな社長に健康の秘訣を聞いたー「老人はまず足から衰えますから、毎日天神橋六丁目まで往復歩き足を鍛えている。体の衰えも少ない」。もう1つ「毎日数字をしっかり確認しているのでボケません・・」と笑い飛ばした。晩酌で赤ワインを飲むのも健康法の秘訣らしい。
事務所にはレコードメーカーや商店街から贈られた感謝状に加え、60年以上の歴史を持つ同店を紹介した新聞や雑誌、そして貴重な写真が壁面を飾る。ちなみに「あこや」の店名の由来は歌舞伎で有名な「阿古屋の琴責」から付けた。
店頭ではメーカーから要望があればアーティストの店頭イベントを行う。

野村社長のつぶやき・・・昨年のNHK紅白歌合戦は演歌系の歌手が少なかった。演歌のメインターゲットである層には理解できない。実際当店に来るお客さんからは「面白くない」との意見が圧倒的に多い。どのような形で出演者を決めるのか?、もう少し分かりやすく説明してほしい。中高年齢に絞った演歌系と、若者に絞ったステージを分けたらいいのでは。皆さんに評価されてのNHKではないだろうか。CDショップは音楽ファンと一番近いメディアであるので我々が一番良く分かっている。(談)