<三>早瀬ひとみ(日本コロムビア):歌い方を知る歌手 -ライブに安定感-

 
歌謡界にはベテラン歌手というのがいる。歌手生活が長いというだけで、歌で何を伝えたいのかも分からず、漫然と歌う歌手が多い中で、歌い方を知るベテラン歌手がいる。日本コロムビアの早瀬ひとみがその人。

「北の岬」という歌で1980(昭和55)年にCBSソニーからデビューし、ABC朝日放送音楽祭で「服部良一特別賞」、新宿音楽祭で「敢闘賞」などを受賞。1983(昭和58)年の第17回日本有線放送大賞では「ちょっとまって大阪」で上半期奨励賞を受賞している。だが、その後はヒット曲に恵まれず、一時マイクを置いた時期を経て、「京都一人」で再び歌謡界に戻ってきた。その心情を早瀬は「やはり歌を忘れられなかった。今はお客様の前で歌えるのが楽しい」という。


「京都一人」

現在はキャンペーンや営業のほかに、東京・銀座の「銀座TACT」で定期的にライブを開催。これまでの演歌だけではなく、シャンソンやカンツォーネ、タンゴなど幅広いジャンルに挑戦し、自分の歌、自分の歌い方を模索している。また、トークはうまい。客層に合わせて話題を変えるなど、観客を飽きさせないライブには安定感がある。

とはいうものの、ここで一つ苦言を呈する。ベテラン歌手には歌詞の理解や伝え方、曲の音程の取り方、さらには歌唱しているときの体全体での表現力などさまざまな味付けがあり、観客を魅了する。だが、その半面、歌手生活の長いことが災いして「手垢(あか)」がこびりつき、観客からすれば、「飽き」を誘うことがある。早瀬にそうして「垢」がないかというと、残念ながら決してないとはいえない。

早瀬は今、自らの歌の道を探求している。おそらくはライブなどを通して観客とともに進化を続けるタイプの歌手といえるだろう。早瀬は「私は東北の出身なので、関東から東には応援してくれる方が多いけれど、これから「京都一人」を携えて関西方面の方にもアピールして一人でも多くのファンを呼び込みたい。そのためには関西以西での活動の幅を広げたい」と強調する。
 
歌手道を追い求める者、その道は長い。今日の歌謡界は「やれ美人だ」「やれかわいい」などと、歌の実力よりも容姿や話題性で評価されるが、それで本当に時代を担う本物の歌手が育つのだろうか。今日のように男女の寿命が伸びている時代、歌手も年齢や容姿、話題性などにこだわらず、早瀬には、本物の歌手道を追い求め、観客を楽しませてほしいと願う。

文&写真・GoRo.