昭和、平成を揺らぎない実力と実績で演歌界を引っ張って来たサブちゃんこと北島三郎のステージを久々に大阪・新歌舞伎座で観た。円熟味を増した歌に加え、一句一句の言葉に重みを感じた。当日は同じ事務所の原田悠里、大江 裕という北島ファミリーが脇を固めるという演出だったが、ステージ一杯に漂う和気あいあいの雰囲気に観衆は最後まで惜しみない声援と拍手を送った。
仕事がら、歌い手の公演には新歌舞伎座さんから招待を受ける。いつも1階後方の席だが今回はなんと前から3列目。サブちゃんのあの大きな鼻が見れるわ…と変な期待感を持ちながらの観賞。スタートは3人揃って登場。北島は「今日はファミリーとして呼んで頂いた。少々脱線するかも知れないが皆さんと一体感を出したい」と3人揃ってオープニング。この後、大江はデビュー曲の「のろま大将」、原田は出世作「木曾路の女」を熱唱。北島から2人にデビュー当時の事、故郷の事など―。「すぐ消える歌手が多い中、君はだんだん良くなっているナ~」とお褒めの言葉を貰った大江はあの大きな身体を揺すりながら北島の元へ。マイクで頭をコツンと叩かれ照れ笑い。ファミリーならではの光景だった。
そんな北島、今年芸道58年。「1曲、1曲が歌い手にとっては財産です。10月に83歳になりますが一度の人生もう前に行くしかないんです。幸せな歌手です。とくに海、山をテーマにした作品が多い」と「北の漁場」「函館の女」「兄弟仁義」などの代表作を披露した。また、映画にも触れ、「任侠ものだけで50本以上に出演したが、映画にも一生忘れない沢山の思い出がある」と振り返った。エンディングは3人揃って「まつり」で締めくくった。

そんなサブちゃんが歌の合間にこんな事を語った。
83歳を迎える今もこのステージに立たせて頂いている事に感謝で一杯です。この先余り残ってない人生だがもう行くしかない、進むしかない、そんな心境です。振り返ると色んな事が甦ります。でも大阪はデビュー当時から大好きです。『なみだ船』の全国ヒットのきっかけを作ってくれたのは大阪でした。私を支えて頂いた沢山の方々に感謝で一杯です。生活の歌が演歌です。どうぞ皆様のお力で演歌ご支援下さい」。
数年前に何度も大トリを取った年末のひのき舞台であるNHK紅白歌合戦から身を引いた。「将来のある若手にチャンスを与えたい」というのが大きな理由だった。デビュー以来、ずっと歌謡界の第一線で活躍。途切れることなく演歌界に風穴を開けてきたし、ひと声聞いただけで「サブちゃん」と分かるその色合いの強さは最大の武器と言える。芸歴の長い歌手の中には「ベテランにしては平凡すぎる」そんな作品も多いが、サブちゃんの歌にはそんな平凡な歌は見つけようとしても見つからない。当日のステージでは1曲、1曲に歌心の芯を暖かさで包み込んでいくサブちゃんらしさを垣間見た。58年間、演歌界に真正面から立ち向かってきたその姿勢、情熱が世代を越えても愛され続けているゆえんであろう。まだまだ第一線で演歌界を引っ張り、ご意見番として後輩の成長を見守ってほしい。そう願うのは記者だけではあるまい。
沢山の人々を勇気付てくれた演歌の灯りを消さないでほしいし、また消してはいけない。歌の合間にそっと語った言葉がある。「10歳くらい戻りたい…」サブちゃんの率直な本音であろう。そんな言葉を聞いた会場のファンからは「ありがとう」という言葉があちこちから飛び交った。きっと準備をしていたに違いない。これまで座長公演には必ずお声を掛けて頂いたし、取材にも気軽に対応してくれたサブちゃんに感謝の言葉を送りたい。「ありがとう。サブちゃん」。

文:金丸