アンコールの歌謡浪曲「九段の母」では会場一杯に埋めた観衆の涙を誘った―。
昨年5月に19歳で「なみだの峠」でデビューした朝花美穂(徳間ジャパンコミュニケーションズ)がこのほど岡山県新見市の芝居小屋「新見新歌舞喜座」で行われた「朝花美穂 華の廻り舞台」に出演。全国から集まった熱心なファン約400人(昼夜2回公演)を前にデビュー1年余りとは思えない卓越した歌唱力に加え、歌謡芝居でもその演技力を見せつけるなど芸達者な技が随所に輝いた。この日の昼夜2回公演には地元は勿論、出身地の鳥取など全国から熱心なファンが集まった。

朝花の最初のステージを観たのは昨年8月に神戸市内で開催された人気のマンスリーライブ「KOBE流行歌ライブ」。当時の印象は強烈で、会場から大きなどよめきが起こったことは今も鮮明に脳裏に焼き付いているほどの衝撃のステージだった。そんな期待感を込めながら大阪から車を飛ばし現地に向かって観覧した夜の部―。


1stアルバム「美穂の演歌名曲集」

待ちに待った緞帳が上がり6月5日に発売した1stアルバム「美穂の演歌名曲集」の1曲目に収録している威勢のいい「お初にござんす、朝花美穂」でオープニング。そしてデビュー曲の「なみだの峠」と続いた。歌い終えた途端、「皆さ~ん、こんばんは!」と歌からは想像もつかない何とも愛らしいお喋りに会場から一斉に笑いが飛んだ。


「昨年の5月にデビューしました“演歌と大衆演劇が大好き”な朝花美穂です。いつかは花道のあるところで歌ってみたかったんですが、その夢が実現できてとっても感激しています。今日は精一杯歌います」と挨拶。続いて「NHKのど自慢」でチャンピオンに選ばれデビューのきっかけになった島津亜矢の「縁」、デビュー曲のカップリング「伯耆大山」、今年も7月に出演する地元・米子の祭りをテーマにした新曲カップリング「がいな祭」、懐歌詞の名曲から「ソーラン渡り鳥」「アンコ椿は恋の花」、1stアルバムの中から朝花自身も大好きという人生の応援歌「演歌魂」を披露した。


休憩を挟んでの2部は大衆演劇風の男形で渋めに登場。


舞踊を盛り込みながら「秋時雨」や張り子面をかぶり愛嬌タップリに会場を回る「俺ら東京さ行ぐだ」のほか、「浪花しぐれ『桂春団治』」にも挑戦するなど芸達者ぶりを魅せつけ「望郷じょんから」「兄弟船」と歌い上げた。

後半は、「お富さん」「旅姿三人男」「瞼の母」を熱唱し、「子供の頃からカラオケ大会などでよく聞いてました」というJR西日本の岡山~鳥取間を走る「伯備線」をタイトルにしたご当地ソングを披露。ラストは第2弾シングル「出世街道旅がらす」(作詞:原 文彦/作曲:宮下健治/編曲:伊戸のりお)を歌い終えたが、間髪入れずに会場から一斉にアンコールの連呼。


それに応えるかのようにお婆さん姿に扮した真骨頂の歌謡芝居「九段の母」で幕を締めた。

約2時間のライブはあっという間だったが、新人の域を超えたひとつ1つの技に大物の片鱗さえ感じた。歌謡界はここ数年「歌が平凡すぎる」―そんな声も少なくないが、そんな事には関係なく等身大の若さを武器にした朝花美穂にしか歌えない“流れ”を作ってくれるだろう、間違いなく将来の演歌・歌謡曲界を背負って立つ逸材だ。

会場となった岡山県北唯一の升席花道完備の本格派芝居小屋「新見新歌舞喜座」(運営・有限会社光琳工芸 井上 勉代表取締役)ではこれまで、島津亜矢、三山ひろし、北山たけし等が公演を行っているが、この11月27日(水)には田川寿美特別公演(特別ゲスト:一条貫太)が開催される。