昭和から平成を駆け抜けている歌謡界の2大スター、五木ひろしと天童よしみが大阪・新歌舞伎座で「初春歌合戦」と銘打ったコンサートを開催している。この公演は大阪・新歌舞伎座開場60周年特別企画として開催されているもので連日、演歌・歌謡曲ファンで大賑わいとなっている。

同公演の2部構成の第1部は日本人の心の歌を歌い継ぎ後世に残したい、そんな思いから歌謡界の黄金時代を形成した昭和の名曲を綴る「日本人が愛した歌」、そして第2部は新曲を含めたそれぞれのオリジナル曲を披露する「歌は永遠の翼」。研磨を積み重ねた歌唱力と歌心が伝わるステージの、会場一杯に埋め尽くした観衆を暖かく包み込んだ様はまさに圧巻のひと言。演歌界を引っ張っている2人の実力を改めて感じられるステージだ。共に自己に厳しく演歌の王道をひたすら走り続け、演歌界を代表する歌手の旗頭としての地歩を固めてきた2人の共通点は2つ。1つはデビューでいきなりスターダムに躍り出たのではなく試練に耐え艱難辛苦を経て今日の栄光をつかみ取ったこと。もう1つは’70年代の当時画期的だった人気テレビ番組「全日本歌謡選手権」で見事に10週連続勝ち抜きグランドチャンピオンになったこと―。


観覧日の第1部はステージ中央から2人が揃って登場。五木が奏でるギターで今年1月に生誕100年を迎えたバタヤンこと田端義男の代表作「かえり船」でオープニング。「ふるさとの燈台」と続いた後、近江俊郎、田端義男と並び戦後の三羽ガラスと言われた岡 晴夫の「憧れのハワイ航路」。そして昭和30年代の歌謡界を牽引した三橋美智也の「哀愁列車」、春日八郎の「赤いランプの終列車」のほか、三波春夫や村田英雄の代表作もたっぷりと披露。一方の天童は笠置シヅ子の「東京ブギウギ」や島倉千代子の「愛のさざなみ」のほか、二人による美空ひばり作品や島倉の「人生いろいろ」を熱唱した。

第2部の前半はポップス系作品からのオープニング「ダンシング・オールナイト」、「ロンリー・チャップリン」と続き、五木が「悲しい色やね」、天童が「やっぱ好きやねん」などを披露。


なかでも2人で歌った「浪花恋しぐれ」では笑いを誘った寸劇を盛り込みながらの熱演に会場も大いに盛り上がった。
後半はそれぞれ活動の中で転機となったオリジナル作品から、天童は「頓堀人情」「珍島物語」のほか先日発売したばかりの新曲「一番星」を歌い、衣装も自ら「初めて」という14ポーズで登場した。「デビュー当時から五木さんには励まし続けてもらったんです。2人でコンサートをしたい、という願いがやっと実現しました。チャレンジの気持ちで歌わせてもらいました」と語った。
一方の五木はスマッシュヒットした「夜明けのブルース」に始まり「ふりむけば日本海」「山河」のほか、最後はラテン風にアレンジした新曲「VIVA・LA・VIDA!~生きてるっていいね!~」をダンサーを従え披露。エンディングは天童と「お祭りマンボ」で締めくくった。五木は「平成から元号が変わる。どんな元号になるのか興味深いが、昭和の名曲はいつまでも歌い継がれていくに違いない。これからもしっかりと昭和の名曲を継承していきたい」と結んだ。

五木と天童のデビュー当初からの夢がやっと実現したステージ。2人の歌を聞いて日本人が失ってしまったと言われる「美しい心」を感じる一時でもあったし、才能多岐の2人にこれからも歌謡界を引っ張ってほしいと願うばかりだ。約3時間半に亘る全36曲の熱唱は至福のひと時だった。

*写真提供:新歌舞伎座