歌唱力、テクニックなど歌手にとっての必須条件は完璧だし、ファンの期待を裏切ることはない、そんな1人として、また歌謡界のトップランナーとして不動の五木ひろしが8月28日に待望の新曲「VIVA・LA・VIDA!~生きているっていいね!~」(作詞・なかにし礼/作曲・杉本眞人/編曲・猪股義周)を発売する。そのPRで来阪。一部メディアを前に新曲にかける意気込みや厳しい歌謡界の現状についても熱い思いを語った。この中で五木は「新曲はスケール感のある明るい作品になった。五木ひろしの原点ともいえる『よこはま・たそがれ』の思いも込められている。新しい出会いが生まれそうだ。これからも攻めていきたいし瞬間のひらめきを大切にしていきたい」など語った。

新曲は作詞家であり作家でもあるなかにし礼氏が、♪生きてるって いいね! 涙の日々もあったけど…と数年前にガンから見事生還し、生きることへの尊しさや喜びを見事なタッチで書き下ろした。また、作曲は「吾亦紅」などのヒットで知られる杉本眞人がテンポのいいリズムをのせ、同時に「夜明けのブルース」や「博多ア・ラ・モード」に共通するラテン調のアレンジに仕上げた。
「制作の段階では何人かの候補があったんですが、最終的になかにし礼さんにお願いしたところ快く引き受けて頂きました。ご自分の病気との闘いで生死を彷徨った時期もあったと聞いてます。そんな闘いの中で生きている喜びなどの思いで綴られています。ある意味では実話に基づいた詞だと思います」と語る五木。詞の完成には時間がそれなりにかかったらしいが、メロディーは杉本が一気に付けたという。

五木ひろしになって48年、歌手としてデビューしてもう54年になる。キャリア、実績からしてそろそろ守りに入る時期だが、歌謡界のトップランナーという自負に加え業界の活性化という視点からも今なお攻め続けている。
「まだまだ守りに入る年でもないし時期でもない。いつまでも現役でヒットを出すのが自分にとっては当たり前だと思っている。これまで『夜明けのブルース』や『博多ア・ラ・モード』に代表されるように瞬間のひらめきを大事にしてきたし自分の感を頼りにしてきた。これからもひらめき、感を大事にしながらやれる事は全てやろうと思っている」。成長過程の中で五木にとってひらめきや感はある意味では1つの転機に違いない。

ここ数年、光り輝いていた昭和時代の作品が見直されている。そのきっかけを作っているのがBS放送の一連の歌番組だ。五木自身もBS朝日で「日本の名曲 人生、歌がある」の司会役で毎回出演中だ。「昭和のいい時代は歌と生活がかみ合っていた。故郷、家族を思う気持ちが昭和のいい時代にはあった。そんな事がここにきて見直されているのではないかと思う。BSの歌番組は確かに市場を刺激しているだろうが、目標は地上波テレビでいい全国区の歌番組を作ること、それが僕の願望です」と近い将来クオリティーの高いしかも本格的な歌番組を目指したいらしい。

CDショップの減少で歌謡界を取り巻く環境は厳しい。五木にも危機感があるのでは?と問うてみた。「全くないですね。歌を聴くという思い、気持ちに変化はない。求める方法に変化が見られるだけ。時代にマッチした作品を作れば必ず売れる。CDショップは減少しているが簡単にネットで買える便利な時代でもあり、逆にやりがいがある」と不安はみじんもないらしい。
また、今回の新曲のスペイン語バージョンを発売する方向で準備に入りたいという。商品化(CD)はしないで全てネット販売する予定。

8月20日には大阪・新歌舞伎座でMBSラジオ「真夏のヒットパレード~昭和歌謡は永遠に~」と銘打ったコンサートを行う。五木ひろしをメインに角川 博、香西かおり、田川寿美らが出演。昭和歌謡、ムード歌謡をたっぷり披露するという企画。

また、来年早々に新歌舞伎座60周年記念特別企画として「初春歌合戦」(1月9日~2月10日)を行う。五木ひろしと天童よしみという両横綱が昭和から平成にかけての名曲を披露する。「天童さんとは色んな面で縁のあるアーティストの1人です。楽しい息の合ったステージにしたいです。来年は田端義男先輩の生誕100年を迎えるので最初その田端先輩の作品でスタートする予定です」。

*記者のひとこと*
五木とは仕事がら色んな所で良く合うが、じっくりインタビューしたのは五木の30周年記念の時以来だ。場所は新歌舞伎座(難波)の楽屋だった。その時のインタビュー記事は夕刊フジで連載した「流行歌 最前線」に掲載した。五木の歌には古いものを残しながら新しいものをどんどん取り入れていく、そんな戦法も魅力の1つだ。キャリア、実績面ではもう歌謡界の重鎮といっても誰も文句の付けようがないだろう。五木に会っていつも感心するのはどんな質問にも真摯な姿勢でしっかりと答えてくれるし、勝利のために冷徹である。トップランナーとしてこれからも風を読むだけではなく、強風を吹かせてほしいものだ、と願う。