かつて舟木一夫、西郷輝彦と御三家として昭和時代の歌謡界を引っ張って来た橋 幸夫が31年ぶりにデュエット作品「君の手を-橋幸夫&林よしこ-」(作詞:田中花乃/作・編曲:井上ヨシマサ)を発売した。それを記念したイベントがこのほど大阪市内のライブハウスで開催され、同時に自身の新曲「サンシャイン」(同)も披露した。再来年芸能生活60周年を迎えるが、昨年は熟年離婚、そして再婚と週刊誌やスポーツ紙の芸能欄を賑わしたことはまだ記憶に新しい。
「お客さんとこんなに近くで歌うなんて夢にも思っていなかった」とステージに登場するや否やそう語った橋。ライブハウス独特の雰囲気に少々戸惑い気味だったが時間とともにその雰囲気に慣れたのか、昭和のいい時代の事、デビュー当時の事…を回想しながら集まったファンに歌とお喋りで大サービス。サービス精神旺盛なところはベテランならではの業か。

今回のデュエット曲は昨年11月、大阪・新歌舞伎座で開催された「大阪歌謡フェスティバル」で橋と同じレコード会社(ビクター)の林よしこと「今夜は離さない」(橋 幸夫&安倍里葎子)を披露したところ、反響が予想外に大きかったことからトントン拍子に話が進みデュエット曲発売のきっかけを作った。作品は橋自身がデビューし、活躍した’60年代のアメリカンポップスをコンセプトに制作したもので、昭和のいい時代の匂いを彷彿させるシンプルな作品に仕上がった。当日はCD購入者を対象に開催されたものでミニライブ終了後はグッズが当たる特典会も行われた。


ここ数年、話題になったデュエット曲は皆無に等しいが、橋自身が吉永小百合とデュエットした「いつでも夢を」、そして安倍里葎子と歌った「今夜は離さない」はともにデュエット曲の代表作として今なおカラオケ族の定番になっている。あれから約30年、橋自身には「デュエット作品を歌いたい…」そんな願望が少なかれ心の隅にあった、という。と、同時に「昭和の良き時代にもう一度戻りたい」という思いもあった。橋にとって今回のデュエット曲はまさに渡りに舟だった。
パートナーに抜擢された林は地元・関西で活動している歌手。’94年に島津ゆたかとデュエットした「いい男!いい女!」でセールス70万枚の実績を持ちいま川西市でカラオケラウンジのオーナー、そして歌手との二足の草鞋を履いている。「まさかこんな雲の上の橋さんとご一緒出来るなんて夢のようです」とステージでは緊張の連続だったが、橋のリードで無難なく務めた。そんな林について橋は「まずさわやかな声が印象的でしたね。それと歌がどうのこうのというより彼女の人間性に惚れました」と第一印象をそう語る。思いがけない林との出会いに確かな手応えを掴んだようだ。


イベントの翌日、再度橋と林に会った。
今回のデュエット作品「君の手を」の発売について橋は「まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。昭和のいい時代をもう一度この作品で再現したい、そんな思いがあります」と歌で勇気付けてくれた昭和の灯りを再びよみ返したい、と言いたげ。
さらに「この年になって新たなチャンスを頂いたことに感謝の一言です。この作品を起爆剤にしてみたいですね」と俄然やる気マンマンの橋。’60年にデビュー曲として発売した股旅演歌「潮来笠」が爆発的にヒットし、いきなりスターの座に。以来、歌謡界の第一線で活躍、まさに順風満帆。が、歌謡界もジャンルの多様化が進み王道をひたすら走っていた演歌・歌謡曲も年々市場規模が縮小を余儀なくされてきた。

「でも昭和のいい時代の作品が最近見直されている。その代表がBS放送での歌番組です。こんな時代だから60周年の時は奇想天外なものへ挑戦もありきかな、と思います。」と60周年を視野に入れた戦略の一端を語る。演歌は中・高年層、ポップスは若者…年代で歌のジャンルを決めようとする風潮は今も存在するが、世代を越えて受け入れられる作品作りを業界挙げて取り組む時が来たように思う。今回の新曲を機に橋さんにはその先導役になってもらいたいものだ。なぜなら歌手でありレコードメーカーの経営者(副社長)としての実績もあるからだ。