1003_tobaichiroデビュー曲「兄弟船」でいきなりガツ~ンと大ヒットを飛ばして以来、演歌界の第一線で活躍している日本クラウンの鳥羽一郎。8月に発売した新曲「北海夫婦唄」(作詞:柴田ちくどう/作曲:徳久広司/編曲:南郷達也)の評判がいい。このほどテレビの収録で来阪し、スケジュールの合間をぬって新曲のことや、最近の演歌界などについて聞いた。
新曲は通常盤に加え「兄弟船」と「海の匂いのお母さん」の2曲を加えたスペシャル盤が同時発売された。また、最近の演歌市場について「なかなか売り上げが伴わない厳しい時代だ。何とかしないといけない」と危機感を募らせた。

30歳と少々遅いデビューだった鳥羽も来年はもう歌手生活35周年になる。新曲はそれを記念した第1弾。「とっても評判がいいので何か仕掛けていい結果をだしたいネ」と新曲への思いを熱く語る。イントロと間奏に入った響きわたるトランペットの音色が心をそそるし、何よりスケール感が出た。 「トランペットは「兄弟船」でも使ったし作品にひとひねりしたいとの思いもあってこれまで結構こだわってきた」とトランペットへの思いをそう表現する。♪あんた出稼ぎ 冬支度 元気でナ~と出稼ぎに出る夫と家を守る妻との夫婦の姿を描いた。その旋律が聴く側の身体の中を響き渡っていく。

これまでの作品作りはディレクター任せだったが、今回は鳥羽が自ら動いた。作詞の柴田ちくどう氏はもう故人だが本職は画家だった。代表作は花村菊枝さんの「潮来花嫁さん」。「もう亡くなられた先生だが、以前デモテープを聞かせていただいたことがあった。やっぱり詞がいいと作品の仕上がりがいい」。
今回は通常盤と代表作2曲を加えたスペシャル盤も出た。こうした傾向は最近流行りの企画だ。「このような形でスペシャル盤を出したのはこれが初めて。他社もこうした企画ものが増えていると聞く。なかなかCDが売れない時代、何かしないといけないという表れだろう」と何か特長を出しながら突破口をとの思いらしい。

鳥羽といえばもうライフワークになっている「海難遺児チリティーコンサート」がある。今も継続しているが震災後は自粛しているらしい。また一方では全国的に作品の歌碑の建立がもう16を数える。ヒット作品が多い表れだし歌手にとってはひとつの勲章でもある。

取材中、一瞬鳥羽の顔が曇った。厳しい演歌界をこれからどうすればいいのか?質問した時だ。「厳しいネ」と前置きし「自分はコンサート会場で手売りをしている。今の市場ではこうした手売りの方法しかないのでは?…ただ、新曲のローテーションが早すぎる。もっとしっかり時間をかけて売っていかないといけない。自分の場合は売れても売れなくてもとにかく1年やろうとスタッフにお願いしている」と新曲はじっくり時間をかけながら売っていく考えだ。
最後に、これからやりたい事は?と水を向けると「特にないネ。このままずっと歌い続けたいネ」と結んだ。

*記者のひとこと*
20年ほど前にある夕刊紙に連載した「流行歌の世界」に書いた原稿のコピーを持参した。鳥羽を取材するのはそれ以来のこと。原稿を見ながら「いい時代だったし、俺も若かったねぇ~」とまんざらでもない様子。新曲の取材だったが、厳しい演歌界の話しになると真剣なまなざしで自分の考えを熱く語る。鳥羽自身相当な危機感を持っているのが手に取るように伝わってきた。デビュー曲の「兄弟船」が大ヒット。以来、海ものが多いのも鳥羽の特長。演歌界にもそんな個々の特長を最大限にしかも鮮明に出せば演歌界の世界が少しは変わるかも知れない。